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商学部の学生のための就職準備「日本語」実践講座での話
本日、商学部一年生の「文章クラス」に、4年生のサトミさんが手伝いに来てくれました。
授業後、「考えろ、とにかく考えろ」というテーマで、ゼミでの活動を紹介してくれました。

皆さんは、ゼミを選ぶとき、何を基準に選ぼうと思っていますか?
先生の専門分野でしょうか。それとも、研究テーマでしょうか。もちろん、それも大切です。でも、私がゼミを選んだ理由は、ちょっと変わっていました。
実は、先生の専門分野が何なのか、最初はよく分からなかったんです(笑)。
ゼミ選びに悩んでいた私は、ある日、商学部のホームページで、ある先生の文章に出会いました。読んでみると、難しいはずの財政や社会保障の話が、驚くほど分かりやすかったのです。
「なるほど、そういうことだったのか!」
頭の中にあった疑問が、次々と整理されていくような感覚でした。
それから、大学の書籍部に行き、その先生の著作を手に取って読んでみると、経済や社会保障について書かれているのに、どんどん引き込まれてしまいました。
そして、気がついたら「この先生のもとで勉強したい!」と思っていたんです。
こうして私は、今のゼミに飛び込みました。
現在、ゼミ生は25人。先生の専門は何かと聞かれると、正直、ひと言では説明できません。ゼミ生である私たちも、経済学や社会保障はもちろん、財政、政治、社会の仕組みなど、さまざまなことを考えています。
でも、私は最近、先生の専門は「世の中で生きていくために必要なこと全部」なのではないかと思っています(笑)。
それくらい、幅広いテーマについて考えるゼミなんです。
先生の口癖は「僕の言うことを信用するなよ」
このゼミの面白いところは、何といっても先生の独特な指導方法です。
先生は、よくこんなことをおっしゃいます。
「僕の言うことを信用するなよ」
えっ、先生の話を信用してはいけないの?と思いますよね。
普通、大学の授業では、先生が専門知識を教えてくれます。学生はそれを聞いて、ノートを取って勉強します。
ところが、このゼミでは少し違います。
先生の話を聞いたら、そこで終わりではありません。「本当にそうなのかな?」「別の考え方はないのかな?」と、自分の頭で考えることが求められるんです。
例えば、社会保障について考えてみます。
日本には、年金や医療保険、介護保険など、私たちの生活を支えるさまざまな制度があります。
では、こうした制度を維持するためのお金は、誰が負担しているのでしょうか。
高齢者が増えれば、年金や医療、介護に必要なお金も増えていきます。一方で、働く世代の人数は減少しています。
そこで、こんな疑問が出てきます。
「社会保障を充実させるために、税金や保険料を増やすべきなのだろうか。それとも、別の方法を考えるべきなのだろうか」
これは、簡単には答えが出ません。
税金や保険料が増えれば、家計の負担が大きくなります。しかし、社会保障を縮小すれば、病気になったときや高齢になったときに、困る人が出てきます。
では、どうすればよいのでしょう。
大切なのは、どちらか一方の意見をすぐに正しいと決めつけないことです。
誰にとって、どんな影響があるのか。今だけでなく、10年後、20年後にはどうなるのか。いろいろな角度から考えてみる必要があります。
先生は、こうした問題についても、簡単に答えを教えてくれるわけではありません。
むしろ、「自分で考えろ」「考えろ、とにかく考えろ」とおっしゃいます。
つまり、このゼミでは、先生の答えを覚えることよりも、自分で答えを探し続けることの方が大切なんです。
「ちゃんとするな、ふらふらしとけ」ってどういうこと?
もう一つ、先生には面白い口癖があります。
それは、「ちゃんとするな、ふらふらしとけ」という言葉です。
大学の先生が学生に向かって言う言葉としては、なかなか珍しいですよね(笑)。
でも、これには大切な意味があると、私たちは考えています。
大学に入ると、どうしても「何を勉強するべきか」「将来は何になるべきか」「どんな資格を取るべきか」と、早く自分の進む道を決めようとしてしまいます。
もちろん、目標を持つことは大切です。
ただ、最初から自分の興味や関心を狭く決めてしまうと、せっかくの新しい発見を見逃してしまうかもしれません。
例えば、マーケティングを勉強している私が、経済学の本を読んでみる。すると、マーケティングだけを学んでいたときには見えなかった社会の仕組みが見えてきます。
反対に、経済学を勉強している人が、法律や歴史、哲学に目を向けてみると、同じ社会問題でも違った見方ができるようになります。
一見、関係がなさそうな知識が、実はつながっている。そんな発見があるんです。
例えば、ある地域で高齢者が増えているという問題を考えるとします。
これは単なる人口の問題なのでしょうか。
実は、医療や介護の問題でもあります。働く人の不足という経済の問題でもありますし、地域でどのように助け合って暮らすかという社会の問題でもあります。
一つの問題を考えるだけでも、いろいろな学問が関係してくるんです。
だからこそ、先生は「ふらふらしとけ」とおっしゃるのです。
いろいろなことに興味を持ち、寄り道をして、時には遠回りをする。その中で、思いがけない発見に出会うことがあるのです。
私は、このゼミで学ぶようになってから、世の中のニュースを見るときにも、「これは法律の問題だけではないな」「経済の視点から考えるとどうなるんだろう」と、いろいろな角度から考えるようになりました。
これも、ゼミに入って得られた大きな宝物だと思っています。

研究者だって間違える。だからこそ、考えることが大切
実は、先生が学生に「とにかく考えろ」とおっしゃるのには、もっと深い理由がありました。
先生は、長年にわたって経済学を使いながら、社会保障や政策について研究してこられました。
この経験から、私たちにとても大切なことを教えてくださいます。
それは、研究者の意見だからといって、必ずしも正しいとは限らない、ということです。
例えば、ある経済学者が「この制度を変えれば、社会はもっと豊かになる」と主張したとします。
その意見が正しいかどうかは、実際に制度を変えてみなければ分からない部分もあります。
もし、その予測が間違っていたらどうなるでしょう。
研究室の中だけの話なら、間違いを認めて、もう一度考え直せばよいかもしれません。
しかし、社会保障や政治、経済の政策は、私たちの生活に直接関わっています。
例えば、医療制度について間違った政策を実行してしまえば、病気になった人や、その家族の生活に大きな影響が出るかもしれません。
つまり、社会に関わる研究では、間違ったときの責任も大きいのです。
先生は、政治や経済を学ぶことの危うさも教えてくださいます。
知識を身につけただけで、すべてを理解したつもりになってはいけない。自分の考えが本当に正しいのか、何度も確かめなければならないのです。
私は、この話を聞いて、大学で学ぶということの意味を改めて考えました。
大学では、専門的な知識をたくさん身につけます。でも、知識が増えれば増えるほど、自分が正しいと思い込んでしまう危険もあるのではないか。
だからこそ、知識を身につけることと同じくらい、自分の考えを疑ってみることが大切なのだと思います。
答えを教えてもらうのではなく、答えを探す力を身につける
皆さんは、大学の勉強というと、どんなイメージを持っていますか?
専門書を読んで、難しい理論を覚えて、試験で正しい答えを書く。そんなイメージがあるかもしれません。
もちろん、そうした勉強も必要です。
でも、このゼミで私が学んだのは、それだけではありません。
例えば、ニュースで「日本の財政が厳しい」という話題が出てきたとします。
そこで、「国の借金が多いから大変なんだな」と思って終わるのではなく、もう一歩先に進んでみます。
「そもそも、なぜ国の借金は増えたのだろう」
「借金を減らすために税金を増やしたら、私たちの生活はどうなるのだろう」
「逆に、借金を減らさなかったら、将来の世代にどんな影響があるのだろう」
こんなふうに、一つのニュースから次々と疑問が生まれてきます。
そして、その疑問について本を読んだり、資料を調べたり、先生やゼミの仲間と考えたりする。
そうすると、最初は何となく見ていたニュースが、急に自分と関係のある問題に見えてくるんです。
私は、これこそ大学で学ぶ面白さだと思っています。
先生は、学生に「僕の仕事は考えることだよ」とおっしゃいます。
そして、私たちにも自分で考えることを求めます。
先生自身も、既存の学問をそのまま信じるのではなく、自分の頭で考え、自分の意見に責任を持つことを大切にされています。
その姿勢は、私たち学生にとって大きな刺激になっています。
もちろん、先生はいつも熱く語っているわけではありません。「僕は脱力系だから」とおっしゃるような、どこか肩の力が抜けた先生です(笑)。
でも、そんな先生の言葉の奥には、学生に本気で考えてほしいという強い思いがあるのだと、ゼミ生みんなが感じています。

大学生活では、少し寄り道をしてみよう
最後に、これからゼミを選ぶ皆さんに伝えたいことがあります。
大学生活では、ぜひ、自分の専門分野だけにとらわれず、いろいろなことに興味を持ってみてください。
法律を学んでいる人が医療についての本を読んでもいい。経済学を学んでいる人が哲学や歴史に興味を持ってもいい。
一見、自分の将来とは関係がなさそうなことでも、いつか思いがけないところで役に立つかもしれません。
そして、何より大切なのは、すぐに答えを出そうとしないことです。
誰かが言ったことをそのまま信じるのではなく、「本当にそうなのかな」と一度立ち止まってみる。自分とは違う意見にも耳を傾けてみる。そして、自分なりの考えを持ってみる。
その繰り返しが、自分のものの見方を少しずつ広げてくれるのだと思います。
このゼミに入って私は、勉強とは単に知識を増やすことではないと気づきました。
世の中には、簡単には答えの出ない問題がたくさんあります。むしろ、答えが一つではない問題の方が多いかもしれません。
だからこそ、考えることが面白いのです。
先生の口癖は、「自分で考えろ」「考えろ、とにかく考えろ」です。
最初は、なかなか厳しい言葉だなと思いました。でも、今では、この言葉がとても好きです。
大学で過ごす時間は、正解を覚えるためだけの時間ではありません。自分の頭で考え、自分なりの答えを探し、時には迷いながら、新しい世界を発見していく時間です。
皆さんも、大学生活の中で、ぜひたくさん寄り道をしてみてください。
そして、何か疑問に思うことがあったら、すぐに答えを探すのではなく、まずは自分の頭で考えてみてください。
「考えろ、とにかく考えろ」。
この言葉の意味が、皆さんにもいつか分かる日が来ると思います。
それが、私がこのゼミで見つけた、大学で学ぶことの一番の楽しさです。
12月生 早稲田大学の学生のためのジャーナリスト養成講座(オンライン)

●故西村欣也氏 ●元朝日新聞編集委員 ●五輪取材経験7回・プロ野球取材30年
●朝日新聞スポーツ面に、署名入り記事「EYE西村欣也」を20年執筆してきた。
●著書 朝日新聞が伝えたプロ野球(小学館) 神の領域を覗いたアスリート(朝日新書)
●イチロー、王貞治、長嶋茂雄、清水宏保、橋本聖子、ダン・ジャンセン、ボブ・ヘイズなど
有名選手を取材してきました。
「受験対話」総合研究所では、27年前から、西村欣也氏の文章を使って、「大学生のことば」を
育ててきました。大学に入学する前から、「自分のことば」を育てる努力を始めると、就職活動時
に、あなたの「自己PR」を読んだ採用担当者から、「キミに会って、話をしてみたい」と連絡がきます。
マスコミをはじめ一流企業の担当者から、「会って、話をしたい」と言ってもらえるように、西村氏の
文章を使い、君に合わせたカリキュラムで授業を行います。早稲田大学の学生諸君、楽しみにしていて下さい。
【故西村欣也氏からあなたへのメッセージ】
確かに、今はネット時代と言われています。
トランプ大統領のツイートに、世界が右往左往しています。
しかし、ニューヨークタイムズなどは言論で、論陣を張り、世論の支持を得ています。
新聞だけではありません。CNNなども、トランプに「フェークニュース」と呼ばれても、事実を伝えています。
まだマスコミには底力があるのです。
僕は、主にスポーツを取材してきましたが、ニューヨークタイムズの新人記者はまずスポーツ部門に配属されます。
そこに人生が凝縮されているからです。
僕は、朝日新聞で長年、小論文の採点面接をしてきました。(やらされてきました)
マスコミ受験には、特に「書く力」が問われます。
門は狭いですが、今までの経験を生かして、スタートラインにつきたいと思う学生のアシストができれば、と思います。
(故西村欣也氏・記)
■12月生
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